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  論文を書く際に注意が必要な事項

1. 投稿規定

 各ジャーナルの投稿規定にはどのように論文を書いたら良いのか詳細に記述されている。ジャーナルにより細かい点が異なるので注意が必要である。投稿規定にも明記されていないような事柄が気になる場合は、すでに出版されている冊子(あるいはオンライン版)で確認するとよい。また論文を書き終えたら共著者全員にドラフトを送り確認を求め、全員の賛同が得られたら、論文にカバーレターを添えて投稿する。

2. 略語の定義

 特に論文を書く場合に気をつけなくてはならない事柄の1つが略語である。学際分野の研究が盛んな今日、他分野の研究者が論文を読む機会も多くなってきている。略語を使用する場合には、タイトル、アブストラクト及び本文で最初に出てきた時に必ずスペルアウトしておくように心がける(逆にこれ以上の回数定義するのは間違いである)。投稿先のジャーナルに指示があれば、一部の略語はスペルアウトせずに使える場合もあるが、いずれにせよ、略語はなるべく丁寧にスペルアウトしておくのが読者に親切である。

また、語尾をいろいろと変化させて同じ略語を使うことは避けなければならない。 例えば、scanning electron microscope (SEM) と定義しておきながら、途中からscanning electron microscopyとしてSEMを使っている論文をよく見かけるが、「走査型電子顕微鏡」と「走査型電子顕微鏡を用いた手法」とでは意味が違う。また、a SEM (またはan SEM)やSEMsのように単数形と複数形の区別をつけなくてはならない(単数形の場合に"a"にするか"an"にするかは、SEMを読む際の発音により変わってくる)。

複数形の単語の場合は、compact discs (CDs) のように略語にも"s"をつける。しかし、中にはmicro-electromechanical systems (MEMS) のように、複数形の単語を"s"をつけずに定義するのが主流になっている略語もある。

3. 受動態の使用

 日本の研究者の書く英語科学論文には受動態(passive voice)が多用されている。 そのひとつの理由は、科学研究は主観を入れず客観的に書かなくてはならないとの考えのもとで、I や we といった主語を避けるからである。しかし、I や we を用いることは必ずしも主観的ではなく、誰が何を行ったのかを明確にするために、かえって客観的な情報として正しい場合もある。そして、「私」や「私たち」を明記する場合には、受動態の文は能動態(active voice)の文章より長くなりがちである。例えば、能動態のWe measured the length. を受動態で書くと、The length was measured by us. となる。能動態では 4単語で書けるが、受動態では6単語となり、能動態の方が簡潔でわかりやすい。

4. 主語と述語の一致

 主語の単数形・複数形に合わせて適切な動詞の形を用いる。
例)
(○) The number of electrons was estimated to be 5×106.
(×) The number of electrons were estimated to be 5×106.
主語は"number"なので、動詞は単数形の"was"になる。
主語が長かったり構造が複雑になるとどれが主語かわかりにくくなるが、述語を主語の人称と数に一致させるように気をつける。

下記の例の場合は注意が必要である。
例)
The behavior of humans and nature is ...
→主語はbehaviorと解釈される。
The behavior of humans and nature are ...
→主語はbehaviorとnatureと解釈される。
例)
Either layer or holes are ...
Neither layer nor holes are ...
→動詞の人称・数は後にくる名詞に合わせる。上の例ではholes(複数形)なので、動詞は"are"。
Not only holes but also the layer is ...
→動詞の人称・数はbut also以下の語に合わせる。上の例ではlayer(単数)なので、動詞は"is"。

5. 論文ではあまり使われない単語

 口語表現ではよく用いられる単語でも、科学論文には適切ではない単語がある。
以下の例で、左側は口語表現など論文では避けた方がよい表現、右側は論文でよく使われる表現である。科学論文の中ではなるべく右側の表現を使うように心掛けよう。
例)
about/around → approximately
become large → increase
but → however
especially → particularly
get → obtain
is known to be → is
in order to → to (論文中では簡潔な表現が好まれるため。しかし、目的を示す不定詞であることがわかりにくい場合には"in order to"を使う。)
is done → is carried out
of great importance → important
red in color → red
reported in the literature → reported
round → circular
small in size → small
take → 文脈により適切な単語を使う
think → consider
though → although

6. 様々な細かいルール

(1) ハイフン (-)、enダッシュ (–)、emダッシュ(—)の使い分け
enダッシュは区間や数字の範囲、同等なものをつなぐ場合(and, or, versusの意)や複数の人名をつなぐ場合に用いる。emダッシュは副題や文中に挿入する場合などに用いる。
・ ハイフン
例)X-ray、1,2-dimethyl-4-propylbenzene
・ enダッシュ
例)1–3 cm (範囲), I–Vcharacteristics (同等なものをつなぐ), Debye–Waller factor (人名をつなぐ)
・ emダッシュ
例)All three experimental parameters—temperature, time, and concentration—were strictly controlled.

(2) 変数の書き方
多くのジャーナルでは、変数はイタリック(x)、添え字(Vss)は立体で書く。定数は最近はイタリックで書かれていることが多い。行列やベクトルはイタリックかつボールド(F)で書くことが多い。

(3) 数式
英文では数式は文章の一部と考えられるため、式の最後にピリオドやコンマが来ることもある。
例)
In this case, the equation of motion is given as
F=ma.
Here, m is the mass, a is the acceleration, and F is the force.
のように式の最後にピリオドを打つ。"Here,"以降で変数を説明している。

または、下記のように、
In this case, the equation of motion is given as
F=ma,
where m is the mass, a is the acceleration, and F is the force.
のように式の最後にコンマをつけ、whereで変数の説明を続ける(whereの後ろにコンマは不要)。

(4) 「◯◯ら」の表現
論文では、「◯◯ら」という場合、et al. もしくは ◯◯ and co-workersなどと記述する。colleaguesという言い方もあるが、論文では上記2つが好まれる。
et al. と co-workers には、明確な用法の違いがある。
例えば、論文の最後に記載されるReferencesが以下のようになっている場合を考える。
-------------------------------------------------
References
1. Adachi, Matsuzaki, Yamada: ...
2. Suzuki, Hida, Fujita, Okamoto: .
3. Fujita and Suzuki: …
------------------------------------------------
本文中で、「◯◯ら」と表現するときは、次のように使い分ける。
・ Adachi et al.1 invented ...
・ Suzuki and co-workers developed2,3 ... も可。
(Fujita and co-workers2,3... も可。)
2つ目の例のように、一つの文章に対して複数の文献を引用する時、それらの文献の著者が全く同一なら et al. を使えるが、一人でも異なれば et al. は使えず、"代表者" and co-workers の形となる。一つ目の例は、文献が一つなので、et al. を使える。

(5) 単位と数字
通常、国際単位系(SI)を使う。しかし、一般的に良く使われる単位であればSIでなくても使用が許される場合もある。
例)Torr, cal, etc.
また、数字と単位の間は通常1スペースあける。
例)1 cm
ただし、"% (percent)"と"° (degree sign)"は数字につけて書くことが多い。
例)90%、45°
同じ単位が何回も列挙される場合は、最後の数字の後にのみ単位をつける。
例)The lengths of A, B, and C are 1, 2, and 3 cm, respectively.
単位には"s"をつけない。
例)20 hs
数字で文章が始まる時には、数字と単位はスペルアウトする。
例)Fifteen milliliters of acetone was added to the reaction vessel.

原則的には9までの数はスペルアウト(one, two, ... nine)、10以上の数は数字で書く(10, 11, ...)。同様に9までの序数はスペルアウト(first, second, ... ninth)、10以上の序数は数字を入れて書く(10th, 11th ...)。

(6) Figure, equation, referenceの文頭と文中での表記
figure, equation, referenceなどが文中に来る場合には、それぞれ、”Fig. 1”, “Eq. (1)”, ”Ref. 1”のように略されることが多いが、文頭の場合には、"Figure 1", "Equation (1)", "Reference 1"のようにスペルアウトする。
例)
Figure 1 shows the analysis results.
The analysis results are shown in Fig. 1.
The analysis results are shown in Figs. 1(a) and 1(b).

(7) 接頭辞(prefix)
inter-, multi-, post-, quasi-, sub-などのように他の単語の前に付けて意味を添えるものを接頭辞という。接頭辞が付いてできた単語は"multidimensional"のように通常は接頭辞と単語の間にハイフンが入らないが、特殊な接頭辞の場合にはハイフンが入る場合もある。
例)
・ ハイフンが入らない場合
antibacterial, multidimensional
・ ハイフンが入る場合(同じ文字が連続する、2つ以上の接頭辞が付く、など)
anti-infective (iが連続する), post-translational (postとtransの二つの接頭辞が含まれる)

(8) いくつかの単語がまとまって最後の名詞を修飾する場合のハイフンの使用
複合語はハイフンでつなぐことが多い。しかし、下記のような例外があるので注意が必要。
(○)bacteria-like organisms
(○)freeze-dried food
(×)accurately-measured values (最初の単語が"-ly"で終わる副詞の場合、ハイフンはつけない。)
(○)accurately measured values
(×)in-situ evaluation values (外国語由来の言葉の場合、ハイフンはつけない。)
(○)in situ evaluation values

(9) 化学記号の前の不定冠詞は、"a"か"an"か?
化学記号の前の不定冠詞は、化学記号を読む際の発音に合わせる。
Siはsilicon [silikɘn]と読むので、aを用いる。
Feはiron [áiɘn]と読むので、anを用いる。([éf]と読んだ場合でも母音なので、いずれにせよanを用いる。)
(○) a Si wafer (Si = silicon)
(○) an Fe ingot (Fe = iron)
(○) a Au electrode (Au = gold)
(○) a Ag electrode (Ag = silver)

(10) アメリカ式綴りとイギリス式綴り
behavior(アメリカ式綴り) ⇔ behaviour(イギリス式綴り)
analyze(アメリカ式綴り) ⇔ analyse(イギリス式綴り)
一般的に、科学論文ではアメリカ式綴りを用いることが多いが、イギリスの出版社が出版しているジャーナルの場合、イギリス式綴りが好まれることもある。どちらを用いるにせよ、論文の中ではアメリカ式綴りあるいはイギリス式綴りのどちらかを一貫して用いること。

(11) 固有名詞のついた方程式や定数
"the [人の名前]constant"と" [人の名前(所有格)] constant"の両方の表記が可能である。後者の場合はtheをつけない。
(○) the Boltzmann constant
(○) Boltzmann’s constant
(×) the Boltzmann’s constant
(○) the Maxwell equations
(○) Maxwell’s equations
(×) the Maxwell’s equations

(12) 表記(イタリック、スモールキャピタル)
・ラテン語由来の言葉をイタリック表記するように求めるジャーナルが多い。
例)in situ, in vitro, et al., e.g.
・生物の学名はイタリック表記
例)Escherichia coli (大腸菌)
・small capital(スモールキャピタル)
化合物の立体配置を示すDとLは小さいサイズの大文字を用いることが多い。
例)D-valine, L-leucine

(13) where (関係副詞)と in which (関係代名詞)の違い
基本的にはどちらの表現も同じように使われることが多いが、下記の例のように
This is the case in which the rule applies.
"which"が物理的な場所ではなく、case (場合)を受けるような場合には"in which"を用いる方がよい。

(14) 顕微鏡画像の意味では、"microscopy image"、"microscope image"、"microscopic image"の表現が使われる。

(15) 前置詞の入った表現
・ 「~の条件のもとで」は"under the conditions of ~"
・ "by" + 方法や手法、"with" + 道具
例)
by scanning electron microscopy 「走査型顕微鏡を用いた手法で(手法)」
with a scanning electron microscope 「走査型顕微鏡を使って(道具)」
・ 「~の方向へ」は"in the direction"

(16) "high"と"large"
次に続く単語により"high"と"large"を使い分ける。
・high
high-speed access, high-accuracy computation
・large
large population, large-diameter pipe, large-angle scattering

(17) シリアルコンマ(Serial comma)
3つ以上の単語やフレーズを列挙するとき、接続詞"and"や"or"を最後の要素の前にのみ置く。
アメリカ英語の場合はA, B, and Cのように最後の要素の前の接続詞の前にシリアルコンマを置くが、
イギリス英語の場合はA, B and Cのようにシリアルコンマを使わないことが多い。
いずれにせよ、どちらかのスタイルを論文を通じて一貫して使う。

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